その子に合った時間
長女は、小さい頃から優秀で優しい子でした。成績もよく、周りからは「どうやって育てているの?」とよく聞かれました。
けれど、学校から帰るとすぐ机に向かい、友達と遊ぶことはいつも二の次。私はその背中を見ながら、時々「これでいいのかな……」と感じていました。でも、その理由は自分でも分かりませんでした。
数年後、息子が生まれました。娘と同じように育てようとしても、うまくいきません。
私は勉強を押しつけるより、大好きな野球を続けられるよう支えることにしました。
ある日、レギュラーに選ばれなかった息子は、帰りの車で声を上げて泣きました。「このまま野球をやめると言い出すのでは」と、私も不安になりました。
ところが翌朝、息子はもう気持ちを切り替え、いつものように練習へ向かっていきました。
その背中を見たとき、あの「これでいいのかな……」の正体が、少し分かった気がしました。
友達と笑うこと。失敗すること。悔しくて泣くこと。誰かを好きになること。
勉強だけではなく、そんな経験も人を育てる大切な学びなのだと。
娘もその後、結婚し、母になりました。人を愛し、子どもを育て、あの頃とは違う経験を重ねています。
娘には娘の時間があり、息子には息子の時間があったのです。
今も、子どもたちのことを心配しなくなったわけではありません。
でも、昔ほど「こうでなければ」とは思わなくなりました。
子育てには、きっと一つの答えはありません。
これからもきっと心配し、迷い続けるのだと思います。
それでも、それぞれの人生を懸命に生きる背中を、愛おしく見つめていきたいです。

