女性の一生 / お家起業 習字編 ②

女性の一生 / お家起業 習字編 ②

新築から、広がる教室

また2名から——美里の教室が育っていく物語

2003年 〜

念願の新築が完成し、習字教室は美里の自分の家へ。けれど、場所が変われば、また一からです。 残った生徒は、娘を入れてたった2名。習字編①「アパートから新築まで」で歩んだのと同じ道を、 わたしはもう一度、今度は自分の家で歩み始めました。

この章も、当時の「教室だより」をたしかめながら、宝物スイッチの10段階に沿って振り返ります。 ⑩で手にしたものを土台に、また①へ——人生が何度もこの10段階を巡っていることが、ここでもはっきり見えてきます。

1

その場にとどまる

2003年・美里へ移転直後

新築の美里に移ったものの、場所が変わったので、教室はまた一からでした。 松本から通い続けてくれた生徒は、娘を入れて、たったの2名。

でも、不安なゼロからの2名だった①の頃とは、少し違います。 もう自分の家、自分の教室という土台があります。同じ2名でも、経験を積んで、また新しい場所にとどまった——螺旋を一段のぼった①でした。

宝物スイッチ①「その場にとどまる」。 ⑩で手にした「自分の家の教室」を土台に、また新しい場所に身を置く。焦らず、ここから育てていく。
2

ワクワクする

2003年〜

2名を5名にしなければ、支部として教室が続けられない。それは、アパートの頃と同じでした。 だからわたしは、また身近なところから人をつないでいきました。近所のママ友の子。そして——夫の良一も。

大人だから難しいお手本は無理だろうと、良一は小学生のお手本から始めました。 教室だよりには「小学五年生 久場良一くん」として、その名が残っています。 遠くから生徒を探すのではなく、いちばん身近な人を巻き込んで、5名以上に。美里の教室として、また火がつきました。

宝物スイッチ②「ワクワクする」。 ワクワクは、今あるもの——身近な人——をつなげると、火がついて生まれてくる。ここでも、その火のつけ方は変わりませんでした。
3

夢中になる

2003年〜

わたしが夢中になったのは、集客でした。ただし——「会員を増やしたい」のではありません。 「この教室を、この場所を、知ってもらいたい」。その想いのほうが、ずっと強かったのです。

だから、会員でない子も、お楽しみ会やお泊り会に受け入れました。 お化け屋敷、花火、カレーライス、ボウリング大会。教室だよりには何度も「習字の子だけでなく、お友達も誘ってください」と書いています。 囲い込むのではなく、開いて、届ける。その準備や段取りに、自分ごととして夢中になっていました。

宝物スイッチ③「夢中になる」。 楽しいからではなく、「知ってもらいたい」という想いを自分ごととして引き受けたから、手間のかかる集客にも夢中になれました。
4

繰り返す

2003年〜

わたしが繰り返し続けたのは、技術を教えることだけではありませんでした。 お手本にある観峰先生の言葉から、生き方や道徳を、子どもたちに伝えたい——そう思っていました。

毎月の教室だよりに、わたしは必ず生き方の言葉を添えました。 「持続は力なり、石の上にも三年」「人生山あり谷あり、苦難は成長のチャンス」「書く主人公は、あなたの心」—— とめ・はね・はらいの技術だけなら、こんな言葉はいりません。それでも毎号、欠かさず書き続けました。字だけでなく、心を伝えたくて。

宝物スイッチ④「繰り返す」。 何年も、生き方の言葉を伝え続けた。この繰り返しが——のちに、わたし自身の生き方になっていきます。
5

新しいイメージが生まれる

2004年6月

ある日、ママ友が、松本幼児学園にわたしを紹介してくれました。 「習字を教えられる人がいるよ」と、わたしの名前をつないでくれたのです。行ってみたら、採用されました。

自分から探した仕事ではありません。それまで積み重ねてきたものが、ママ友の紹介という思いがけない形で、新しい道を開いてくれました。 それまで自分の教室の中だけだった習字が、学童へ——初めて、教室の外へと出ていったのです。

宝物スイッチ⑤「新しいイメージが生まれる」。 新しい景色は、探さなくても、向こうからやってくる。身近な人とのつながりが、次の道を運んできてくれました。
6

具体化する

2004年8〜9月

きっかけは、娘の「英語を習いたい」という一言でした。 学校で英語のカルタをしたとき、英語教室に通う子にかなわなかった。それが悔しくて、習いたいと言い出したのです。

あちこち見学しました。けれど、いいところは高い。安いところは、子どもが眠そうで、中身がいまひとつ。 そこで、英会話教室をしていた義理の姉に相談したところ、ネイティブの先生を派遣してもらえることになりました。 こうして、美里の習字教室の中に、英会話教室という新しい形が生まれたのです。

宝物スイッチ⑥「具体化する」。 娘の願いという火種を、義理の姉の助けを借りて、実際の教室の形に落とし込む。ここでも、道を開いたのは身近な人でした。
7

いろんな角度から磨く

2004年〜

英会話教室を始めてみると、思いがけない相乗効果が生まれました。

英会話に来た人が「ここは習字もやっているのか」と、習字に入会する。 習字の人が「英会話もやっているのか」と、英会話に入会する。 ひとつの教室が、習字と英語という二つの入り口を持ったことで、お互いがお互いを呼び合い、教室全体の価値が高まっていったのです。

宝物スイッチ⑦「いろんな角度から磨く」。 ひとつの角度だけでは、届く人も限られます。もう一つの角度を足したことで、教室は多面的になり、価値が高まりました。
8

軸が立つ

2004年〜

バラバラに始まったことが、やがて一週間という型に、きちんと収まっていきました。 月曜と木曜の3時から9時は習字。金曜は英会話。そして、幼児学園への出張。

もう迷いません。この曜日はこれ、と決まっている。 広げるだけでは、いつか散らかって続かなくなります。けれど、一週間のリズムができたことで、すべてが回るようになりました。 そして、わたしの一週間は、充実したものになったのです。

宝物スイッチ⑧「軸が立つ」。 あれこれ広げたあとに、「これで回る」という型が定まる。ブレない一週間が、軸になりました。
9

形にする

2004年〜

2名から始めた美里教室は、生徒がどんどん増えていきました。 人数が増えるたびに曜日を増やし、やがて月曜クラス、木曜クラスと分けるほどに。

通う子どもたちの学校も、美里小、美原小、松本幼児学園と広がっていきました。 小さな2名の教室が、地域にちゃんと根づいた"形"になっていったのです。

宝物スイッチ⑨「形にする」。 育ててきたものが、クラス分けが必要なほどの、確かな教室の形になっていきました。
10

自分のものになる

やがて、大人も続々と入ってくるようになりました。 昼は小学生、夜は中学生、その間に大人のクラス。子どもだけの教室が、あらゆる世代の通う場所になったのです。

木曜は、夕飯をいつも3時前までに作っておきました。教室のある日は、それに合わせて一日が回る。 教室は、もう「頑張って続けているもの」ではなく、暮らしそのものに溶け込んでいました。 わたしの生活の一部として、自分そのものになっていったのです。

宝物スイッチ⑩「自分のものになる」。 やってきたことが、暮らしに吸収されて、自分そのものになる。そしてこの根づいた美里教室を土台に、また次の新しい①が始まっていきます。

ふた巡り目に、見えたこと

新築という⑩を手にして、わたしはまた①へ戻りました。場所が変われば、また2名から。 習字編①とまったく同じやり方で——身近な人を巻き込み、火をつけ、夢中になり、繰り返す。 わたしは無意識のうちに、同じ10段階を、もう一度たどっていたのです。宝物スイッチは、頭で考えた理屈ではなく、わたしの体に染みついた生き方でした。

そして、この②巡り目には、①巡り目にはなかった深まりもありました。 生徒も、学童も、英会話も——次の道はいつも、ママ友や娘や義理の姉といった、身近な人とのつながりから運ばれてきました。 人を大切にして耕してきた関係が、思いがけない形で、次の扉を開いてくれたのです。

⑩は、終わりではありませんでした。 根づいた美里教室を土台に、習字教室の物語は、さらに次の①へと続いていきます。
女性の一生 / お家起業 習字編 ② | くばえつこ

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